では、続いてもう一問出してみましょう。サルは言葉をしゃべれるでしょうか?

 

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訓練したら、しゃべれるようになるのではありませんか。

オウムや九官鳥みたいに人間の声色が使えるかということとは違います。言語を使えるようになるかということです

 

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それなら無理でしょう。威嚇の手段や警戒の合図、愛情表現などで吠えたり、うなったりはできるとしても、世界の姿を自分の頭の中で構築していく仕組みが言語だとしたら、サルには言語の構造を組み立てていくことはできないと思います。群れの中で身近な物、例えば石を「石(いし)」と呼ぼうという具合に名前をつけていくこともできないでしょう。

確かに言語は、まず自分の存在を意識することから始まります。でも、世界をとらえることは一部のサルには可能です。人間がチンパンジーにバナナを見せて、「ウー」と一回うなってやると、利口なチンパンジーならバナナと「ウー」といううなり声を結びつけて考えるようになります。ゴリラを訓練したら、言葉をしゃべれるようになったとする研究報告もあります。

ただ、ここで問題としているのは、サルが自ら言語を獲得できるようになるかということです。つまり、この質問は、言語はどうやって生まれたのかという命題に行き着くのです。

人類が言語を手に入れたのは、そんなに昔のことではありません。せいぜい五万年ほど前、ちょうどクロマニョン人(新人)が繁栄し始め、ネアンデルタール人(旧人)が消えていった境目の頃と考えられています。

クロマニョン人は言語をもっていました。一方、ネアンデルタール人はクロマニョン人ほど完成された言語をもっていなかったとされています。集団の中で合図を交わす程度のことはできたようですが、この能力はチンパンジーやゴリラなどの類人猿とあまり差がなく、言語と呼べるようなものではありませんでした。

けれども、ネアンデルタール人の化石から脳の大きさを推測してみると、彼らの脳は決して劣っていなかったことがわかっています。容量としてはクロマニョン人より大きいぐらいです。では、なぜ彼らは言語をもてなかったのでしょうか。

 

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骨格上、ネアンデルタール人には、明瞭な発声機能がなかったという話をいたことがあります。

発声の問題はあったにしても、そのことと言語の獲得は別の話でしょう。

もう少し考えてみて下さい。五万ほど年前、地球上に住むクロマニョン人の中で最も知能の高い一人が言葉をしゃべり出し、それが全世界に伝播していくというようなことが果たして起きうるでしょうか。そんなことは不可能ではありませんか。

いつだったか、この問題を考えていて、ふと気付きました。言語は作られたものではない。これは同時多発だ。あるとき、突如として一斉にしゃべりだしたのだと。

今、人類の間で話されている言語を考察してみましょう。言語は地域によって異なり、その民族にとって固有の文化だとされています。単語が違い、文法が違う。では、文法の大元、言語を言語として成り立たせる根本の法則はどうでしょうか。これについては、だいたいとの言語も同じようなものではないかと考えられるのです。

わかりやすく数式で表してみましょう。

1から4までの整数を足すと10になる。これを数式で表現すると、「1+2+3+4=10」となります。「4+3+2+1=10」「1+4+3+2=10」などと数字の順番を入れ替えても、表していることは変わりません。あるいは、「1+(2+3+4)=10」「(1+2)+(3+4)=10」などとカッコを使って表現しても、答えは10と不変です。

実は諸言語の文法にはこのぐらいの差異しかありません。単語の違いを除けば、あとはどの順番で何を話すかぐらいの違いぐらいしか見当たらない。でなければ、ある言語を別の言語に翻訳することなど不可能ということになります。

世界中にある言語の基本法則はどれも同じ。だとすれば、これは人間のだれかが意図的に作り出せるものではありません。名詞などの単語ぐらいは話し合いで決めることができても、さまざまな単語の並べ方、文法を作り出すことはできない。それは1+1=2という法則を人間が作れないのと同じです。
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このことはさっき話した生命の誕生の瞬間と似ています。すべてのクロマニョン人は、あるとき同時に言語をしゃべれるようになった。だれかが言語を獲得し、だれかに話し方を教えたのではなく、言語はある瞬間を境にヒトの脳の中に創出された。言語体系が生まれる「型」みたいなものが脳にあり、それがあるときヒトによって発見されて、一斉に動き始めたとしか説明できません。あるいは、感覚的知覚の延長線で、言語が誕生したのではないでしょうか。

ここまで考えると、サルに言葉は話せるかという問いに対する答えははっきりしてきます。クロマニョン人の脳には言語体系の「型」があった。ネアンデルタール人の脳にはそれがなく、その結果、ネアンデルタール人はクロマニョン人に取って代わられた。もちろんサルにもありません。

初めに述べたように、サルには物の区別、物と発声の結びつきぐらいは理解、習得できたとしても、文章を構成できないからです。したがってサルは言語を獲得できない。サルは言葉をしゃべれないという結論にたどり着きます。

このように物事を考えると、いろいろなことがわかりやすくなります。シンクロニシティという言葉を聞いたことがあるでしょう。これもサルの話です。ある海岸で一匹のサルがイモを洗って食べた。海水でイモを洗うと、土が落とせるだけでなく、イモに塩味がついておいしくなる。一匹がそうすると、周りのサルが真似をした。その海岸ではたくさんのサルがイモを海水で洗って食べるようになった。

ところが、ここから不思議なことが起きていきます。サルが海水でイモを洗って食べる。これとまったく同じ現象が世界各地で同時に観察されるようになるのです。もちろん、サル同士だから情報交換はできないし、海水でイモを洗うという知恵が、海を隔てた地域までそう簡単に伝播するわけがありません。だれが教えたわけでもなく、伝えたわけでもない。にもかかわらず、世界中のサルが、同時に海水でイモを洗い始める。これがシンクロニシティです。

人間が言語を取得した過程には、シンクロニシティが作用したという気がしてなりません。

 

前回の記事はコチラ→【雰囲気に任せて結論を急ぐべきではない